100名城 No.40 国指定史跡 入城料 無料

「石垣を使わない城」と聞いて、どんな城を想像するだろうか。
山中城は石を一切使わない。
使うのは土と、知恵と、そして敵への底知れない殺意だ。
標高580m、箱根の山中に今なお刻まれた「障子堀」と「畝堀」のリズム——その異様な造形を目の前にしたとき、あなたは間違いなく足を止める。

山中城とはどんな城か
山中城は、後北条氏が小田原城西方の守りを固めるために築いた山城で、標高580メートル、城の範囲は東西500メートル・南北1,000メートルに及ぶ巨大な要塞だ。
旧東海道・箱根街道を城内に取り込む形で設計された「街道城」という点も特徴的で、往来する旅人を監視し、関所的な役割も担っていた。
最大の特徴は、石垣を一切使わず土を掘り積み上げることで築かれた、全国的にも珍しい「純土造りの城」であることだ。
その結果として生まれたのが、堀底を格子状に仕切った「障子堀」と「畝堀」という北条氏独自の防衛システムである。
1590年(天正18年)、豊臣秀吉の小田原攻めに際して、約67,000の豊臣軍が押し寄せた。
対する北条方はわずか約4,000人。その差17倍という圧倒的な兵力差の前に、山中城はわずか半日で落城した。
しかし——守備側の将の1人である渡辺勘兵衛の覚書が伝えるように、その戦闘は凄まじいものだった。
豊臣方の有力武将・一柳直末も銃撃で討死している。
4,000が7万を半日足止めした事実は、北条築城術の恐ろしさを今に証明している。

遺構を攻城する——おすすめ周回コース
駐車場・バス停を起点とした「2時間コース」が定番だ。順序が肝心——ここは必ず以下の順で攻めてほしい。
①🏕 岱崎(だいさき)出丸・すり鉢曲輪
駐車場から道路を渡り、まず南側の岱崎出丸へ。落城当日に最初に攻撃を受けた「未完成の出丸」だ。
すり鉢状の曲輪を登ると、伊豆北部から駿東を一望する絶景が広がる。
富士山・愛鷹連峰・三島・沼津の街並みを一度に収められる撮影ポイントとしても最高だ。


②🌿 箱根旧街道・案内所エリア
出丸を下り、案内所・売店へ。
ここでパンフレット(無料)を入手してから先に進もう。
案内所裏には江戸時代の石畳が350mにわたって復元された箱根旧街道がある。
杉並木の中を歩く体験は、戦国時代の旅人の気分を呼び起こしてくれる。


③💧 三の丸・田尻の池・箱井戸
三の丸跡を通り、田尻の池・箱井戸へ。
標高の高い城での貴重な水源で、城兵や馬の飲料水として使われた。
夏には睡蓮が咲き、別の顔を見せる。現在、敵味方の武将の墓が眠る宗閑寺も三の丸跡にある。




④⚔️ 二の丸・本丸
本丸へと続く中枢エリア。
二の丸虎口と架け橋があります!!
本丸跡には藤棚がありました。





⑤🏆 西の丸・西櫓——最大の見せ場!
ここが山中城の真骨頂。
西ノ丸と西櫓の間に広がる「障子堀」は圧巻の一言だ。
上から見れば障子の桟そのものに見えるこの堀は、芝生で保護された現在でもその造形美が際立つ。
さらに西櫓からは御殿場・裾野方面と、晴れていれば雄大な富士山が目に飛び込んでくる。
残念ながら攻城したときは真夏で雲が多く富士山を望めなかったのが悔いが残りました。






⑥🔚 帯曲輪・本丸西堀そして櫓台を経て出口へ
帯曲輪を通って戻るルートが「通」の締め方。
帯曲輪からの俯瞰視点でもう一度、障子堀の全体像を確認してほしい。
城全体の設計思想が腑に落ちる瞬間がある。





アクセス
⏱ 所要時間の目安
さくっと見学:60〜70分 / じっくり攻城:120〜150分入城料は無料。
城内は全体的にアップダウンあり。歩きやすいスニーカー、そしてトレッキングシューズがあれば安心安全で必須です。
そしてトレッキングポールあれば余裕がでます!
見逃せない遺構を深読みする
障子堀(しょうじぼり)
堀底を格子状に仕切った「障子堀」は、滑りやすい土質を活かして敵の足場を奪い、侵入を阻む北条氏独自の執念の防衛策だ。
文化庁の日本遺産にも登録されており、その造形は「堀底のワッフル」とも称される。
上から見たときの均等なリズムは、土木技術の高さを超えた一種の美的感覚さえ感じさせる。

畝堀(うねぼり)
西ノ丸の北側に広がる畝堀は、堀の中に細長い土手(畝)が並ぶ構造。
障子堀と違い、畝の方向が一定で長い。
敵兵がまとまって移動することを不可能にする設計だ。障子堀と畝堀を見比べると、北条氏の「堀哲学」の深さが見えてくる。

西ノ丸・西櫓の土塁
土塁の見張台から見下ろした西ノ丸は広さ3,400平米で、三方に土塁が築かれていた。
今も芝に覆われた土塁が整然と残り、往時の縄張りが手に取るようにわかる。

岱崎出丸・すり鉢曲輪
落城当日、未完成のまま最初に攻撃を受けたのがこの岱崎出丸だ。
それゆえに、ここに立つと他の曲輪より「戦場感」が強い。
物見台に上れば伊豆の山並みが一望でき、敵軍を察知した物見番の緊張感が想像できる。


城郭ライター的3大推しポイント
私が山中城に惚れた理由
① 「土の城」という圧倒的な個性天守も石垣も一切ない。
それでも山中城は、日本100名城の中でも屈指の「語れる城」だ。
遺構が主役になれる城は、実は多くない。
② 障子堀×富士山という唯一無二の構図芝の緑に刻まれた障子堀のリズムと、その向こうに浮かぶ富士山。
この構図は山中城以外では絶対に撮れない。
晴れた日の午前中が特に映える。
③ 「負けた城」の重さが肌で感じられる半日で落城した4,000の将兵の記録がここに残る。
宗閑寺の墓、未完成の出丸——「完成していれば」という問いを旅の後も引きずる城は、そうそうない。
いつ行く?四季の表情
🌸 春(4月中旬)
城内に桜が咲き誇る。
障子堀と桜の組み合わせは絶景。
混雑する前の早朝がおすすめ。
🌿 初夏(5〜6月)
ツツジ・アジサイが見頃。
緑が深まり堀の芝も鮮やか。
富士山の雪もまだ残る季節。
☀️ 夏(7〜10月)
田尻の池に睡蓮が咲く。
標高580mなので市内より涼しく、爽快なハイキング日和ですが暑いのは暑いです。
🍂 秋(10〜11月)
ヒガンバナが咲く。
空気が澄み、富士山の眺望が一年で最も美しい季節のひとつ。
御城印・100名城スタンプ情報
🔖御城印(ごじょういん)
山中城跡公園 案内所・売店にて販売。
種類は13種類ほど(販売終了品含む)が過去に流通している。
デザイン違いや限定版もあるので最新情報を現地で確認しよう。
📮日本100名城スタンプ
同じく案内所・売店に設置。スタンプ台は建物の外に置かれているため、案内所の定休日(月曜)や営業時間外でも押印できる。
📋 案内所・売店 営業情報
営業時間:10:00〜16:00(季節・天候により変更あり)
定休日:月曜(祝日の場合は翌日休み)
※スタンプは時間外・定休日でも押せる(外設置)
アクセス方法
🚌公共交通機関(バス)
JR東海道本線「三島駅」南口 5番乗り場から、東海バス「元箱根港行」に乗車。
約25〜30分、「山中城跡」バス停下車、徒歩3分。
⚠️ 土日は三島スカイウォーク方面の観光客でバスが混雑することあり。
帰りは平日1時間に1本、休日2本程度。
🚗車(駐車場あり・無料)
国道1号を箱根方面へ。
三島市街から約25分。
伊豆縦貫自動車道「三島塚原IC」から国道1号を北へ約9km・15分。
「山中城跡」バス停横に無料駐車場あり。
🚖タクシー三島駅から約15〜20分。
帰りのバス便が少ないため、帰路にタクシーを使う手も有効。
所在地 静岡県三島市山中新田字下ノ沢
入城料 無料
駐車場 無料(案内所横)
トイレ 城内に設置あり所要時間
60〜150分(コースによる)
難易度 ★★☆ 山道あり・アップダウンあり。
スニーカー必須トレッキングシューズあれば、なおよし。
山中城を訪れる前に知っておきたいこと
山中城は「城らしい建物がない」という意味では地味な城かもしれない。
しかし一歩足を踏み入れれば、その「土だけで作られた恐ろしさ」が全身に伝わってくる。
戦国最強の堀システムと、それでも半日で落ちた歴史の無常——この二つが重なる場所は、日本中を探しても山中城しかない。
入城料は無料。
それでいて100名城クオリティの遺構が待っている。
城好きなら「なぜこれが無料なのか」と首を傾げること間違いなし。
三島・箱根観光のついでに——ではなく、山中城を目当てに来る価値がある。そう断言できる城だ。
山中城跡公園(静岡県三島市)


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